シックデイは「体調の悪い日」のことです。
体調の悪い日は食事量がいつもより減ることが多いため、糖尿病の薬を服用してる患者さんでは薬の調整が必要になります。
また、脱水になることで副作用が出やすくなるので服薬を中止しなければならない薬もあります!
そのため、なんとしても水分補給は行なってもらいます。
無理なほど辛い状態なら病院に来てもらいます!患者さんに行う指導を学んでおきましょう。
シックデイとは
- 感染症や炎症などのストレスから血中のカテコラミンやコルチゾールが増えることで高血糖を起こすことがあり、食事摂取の低下で低血糖も起こしやすい状態。
- 糖尿病薬を服用している場合に服用の継続or中止の判断も必要となり、注意が必要である。
- 血糖値が350以上持続している、24時間食事が摂れていない、高熱や消化器症状が強い、意識状態の悪化の場合は受診が必要。
シックデイルール
①保温、安静にして無理な運動は行わない。
②水分補給(1-1.5L/日)を行い、発熱などによる脱水を防ぐ。
③電解質異常を防ぐため、食欲がなくても口当たりや消化に良いもの(お粥やうどん)を摂取する。
感染症時の血糖増悪のメカニズム
①炎症ペプチド(サイトカイン)によるインスリン抵抗性の上昇
②ストレスによるカテコールアミン、コルチゾールなどのインスリン拮抗ホルモンの増加
③発熱、下痢に伴う脱水状態による体外へのブドウ糖の排泄障害
重症感染症(e.g.敗血症)
- 180mg/dL以上の高血糖を呈する場合、インスリンの持続静注を行う。
- 血糖値は140-180mg/dLを目標に維持する。
- 血糖値を110mg/dL未満に維持する強化インスリン療法:死亡率を改善しない・低血糖のリスクが大幅に上昇するため推奨されない。
軽-中等症の入院患者
- インスリンを用いて、低血糖などの副作用なく達成可能であれば、空腹時血糖140mg/dL未満、随時血糖180mg/dL未満を目標とする。
- 血糖値350mg/dL以上の持続、血中ケトン体高値、尿中ケトン体強陽性、意識状態の悪化がみられるとき、来院時には必ず血中、尿中ケトン体の測定を行う。
例:速やかに医療機関を受診させる
- 血糖値が350以上から下がらない。
- 発熱、消化器症状が強い。
- 24時間にわたって経口摂取ができない/著しく少ない。
- 意識障害が悪化してきている。
インスリン
- 患者の自己判断で中断してはならない。
- (特にインスリン分泌がなく、注射によりインスリンを保っている場合)
持効型は食事量に関わらず同量の使用を必要する。
インスリン分泌が保たれていて、患者が低血糖傾向なら中止や減量も考慮する。
→1型糖尿病などインスリンの自己分泌が無い場合は中止は禁忌。
→1型糖尿病などインスリンの自己分泌が無い場合は中止は禁忌。
- 速効型は、食事量(主に糖質)、血糖値、ケトン体に応じて調整する。
半量にするか、血糖値に応じて調節する。
- 頻回(3hおきなど)に血糖値、ケトン体を測定する。
経口血糖降下薬
SU薬・グリニド薬
- 食事摂取不良である場合は調整が必要なため、医療機関に連絡させる。
- 診察時の血糖値や脱水、食事摂取可能かどうかにより中止、減量を判断する。
- 基本的に水分と食事が取れていれば継続が可能であるが、血糖値を測定したいところ。
- 食事量が半分なのであれば半分の投与量にすることも検討できる。
α-グルコシダーゼ阻害薬
- 消化器症状の強いときには中止。
- 脱水になると腹部症状や悪心が現れるため中止。
- 糖の吸収を遅らせる作用から、食事を取れていないのであれば効果が期待できないため服用させる必要はない。
ピオグリタゾン(アクトス)
- シックデイの間は中止することが可能。
メトホルミン(メトグルコ)
- 脱水によって乳酸アシドーシスのリスクが上がるため、シックデイの間は中止。
- 服用中は必ず水分補給は忘れないように指導する。
- 受診時には、投薬の変更を考慮する。
DPP-4阻害薬
- 脱水傾向による副作用は少なく、継続することができる。
GLP-1作動薬
- 脱水傾向による副作用は少なく、継続することができる。
GLP-1作動薬
- シックデイの間の使用については、現在、コンセンサスが得られていない。
→中止で問題ない。 - 血糖自己測定値を参考に、血糖管理が難しいようであれば、インスリンへの切り替えも含めて対応する。
SGLT2阻害薬
- 脱水によってケトアシドーシスのリスクが上がるため、シックデイの間は中止。
例:食事や水分摂取が半分になった
・時効型インスリンは継続
・速効型インスリンは半量に減量(食事前の血糖値を基準に単位を決めて打つことが理想)
・メトホルミン・SGLT2阻害薬、α-グルコシダーゼ阻害薬・GLP-1作動薬は中止
・SU薬・グリニドは半量に減量
・ピオグリタゾン・DPP-4阻害薬は継続(中止も可能)
- 脱水によりメトホルミンは乳酸アシドーシス、SGLT2阻害薬は正常血糖のケトアシドーシスとなる。
- α-グルコシダーゼ阻害薬・GLP-1作動薬は腹部症状や悪心などの胃腸障害が表れる。
- SU薬は食事に応じた減量が目安。
- DPP-4阻害薬は食事量が乏しければインクレチンの分泌も乏しくなり服用してもあまり効果がないため中止も可能。