慢性心不全

【慢性心不全#4】新しい機序の薬剤〜いうてエンレストは2020年発売〜

すでにファンタスティック4の一角を担うエンレスト(ARNI(アーニー))

血圧を下げたくない時に使えるコララン

標準治療に追加で進行抑制を期待するベリキューボ

2020年以降に出た慢性心不全の新しい機序の3つの薬剤!

Quiz

慢性心不全の治療薬について、正しいものを2つ選べ。

  1. ARNIであるエンレストはARBにNa利尿ペプチドを付加した薬剤である。
  2. エンレストは慢性心不全と高血圧に対する用法が異なる。
  3. コラランは血圧を下げる作用により心臓の負荷を下げる。
  4. ベリキューボは慢性心不全と診断したらまず投与を開始したい薬剤である。

a b

  1.  バルサルタン(ARB)サクビトリル(Na利尿ペプチド)を付加した薬剤で、ARBの効果によるAT1受容体阻害による血管収縮抑制、Na・体液貯留抑制。Na利尿ペプチドによる血管拡張、利尿、交感神経抑制がある。
  2. ◯慢性心不全に対しては1日2回で血中濃度を安定させ、高血圧に対しては服薬コンプライアンスを優先して1日1回の用法となっている。
  3. ✕コラランは血圧や収縮機能に影響せず、心拍数だけを減らすことができる。安静時心拍数が75回≦の場合に使用できる。
  4. ✕‬ベリキューボの使用は慢性心不全の標準治療を受けている患者に限られる。まずはファンタスティック4を最優先に開始する。

サクビトリル/バルサルタン(エンレスト)(ARNI(アーニー))

薬理作用

  • バルサルタン(ARB)サクビトリル(Na利尿ペプチド)を付加した薬。
  • バルサルタン:AT1受容体阻害による血管収縮抑制、Na・体液貯留抑制
  • サクビトリル:NEP(ネプリライシン)を阻害することによりNa利尿ペプチドによる血管拡張、利尿、交感神経抑制がある。

用法

  • 1日2回に分けての服用で低血圧の副作用リスクが軽減された。
    心不全に使用する際は1日2回で服用する。(高血圧には1日1回服用)

服用開始させる時の注意点

  • ACE阻害薬/ARBからの切り替えで服用を開始する必要がある。
  • ACE阻害薬からの切り替えの場合、血管浮腫が生じる場合があるためACE阻害薬中止後36h後にエンレストを開始する。
    →ACE阻害薬/ARBがされてない場合は、1日でもARBを服用させた翌日からエンレストを開始する
  • 降圧効果が強いため血圧が低めであれば50mg 2T2×で開始する。
  • 過度な血圧低下がないことを確認して徐々に増量する
エンレストとバルサルタン
  • エンレスト100mgには51.4mgのバルサルタンが配合されている。
  • 1日2回服用するとバルサルタンで102.8mgとなる。
  • 一般的にバルサルタンは1日20-80mgで服用していることが多い。
    →血圧下がるよね〜
  • 2024年には小児の慢性心不全にも適応を取っており、小児へ使用の場合はACE阻害薬/ARBを介すことなく服用を開始できる

高血圧に対する適応

  • 高血圧では服薬継続を重視し、1日1回投与で開発された。
  • トラフ時の降圧効果についてもプラセボとの有意差が得られている。
  • 200mg/日投与ではバルサルタン単剤の通常量80mgを超える約100mg(エンレスト200mgへのバルサルタン配合量)が含まれ、NEP阻害作用も追加されることから、強い降圧作用がある。
第一選択とはせず、1日1回100mgからの開始を考慮する。

イバブラジン(コララン)

薬理作用

HCNチャネル遮断薬

  • 交感神経を介さず心臓の洞結節に直接作用する。
  • 血圧や収縮機能に影響せず、心拍数だけを減らすことができる
β遮断薬とは異なり心不全を悪化させることはない。

使い方

  • β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者において、安静時心拍数が75回≦の場合に使用できる。
  • イバブラジンを早期に投与することで血圧を下げ過ぎずにβ遮断薬を増量する効果が期待できる。
頻脈がある例:イバブラジンを追加後、β遮断薬を徐々に増量し最大用量を投与できた。

ベルイシグアト(ベリキューボ)

薬理作用

可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激+NOの感受性を高める→cGMPの産生を促進

  • NOの作用点であるsGCを直接刺激する→cGMP↑
  • 心不全では酸化ストレスにより内皮細胞が障害されており、NO産生やsGCのNO感受性が低下している
    cGMPを上昇させると、心筋肥厚、心筋硬化といった心不全の進行を抑制する

適応

  • 慢性心不全の標準治療を受けている患者に限られる。
  • HFrEFに限る(HFpEFに対する有効性と安全性は確立していない)。

注意点

・硝酸薬は代謝後にNOとなり血管を拡張して心臓への負担を減らすが、症候性低血圧を起こす恐れがあるため併用注意。

補足

エンレストもネプリライシン抑制でBNP↑→cGMP

・血管拡張やRAA系抑制、心肥大抑制、線維化抑制させる。

問題

Quiz

慢性心不全の治療薬について、正しいものを2つ選べ。

  1. ARNIであるエンレストはARBにNa利尿ペプチドを付加した薬剤である。
  2. エンレストは慢性心不全と高血圧に対する用法が異なる。
  3. コラランは血圧を下げる作用により心臓の負荷を下げる。
  4. ベリキューボは慢性心不全と診断したらまず投与を開始したい薬剤である。

a b

  1.  バルサルタン(ARB)サクビトリル(Na利尿ペプチド)を付加した薬剤で、ARBの効果によるAT1受容体阻害による血管収縮抑制、Na・体液貯留抑制。Na利尿ペプチドによる血管拡張、利尿、交感神経抑制がある。
  2. ◯慢性心不全に対しては1日2回で血中濃度を安定させ、高血圧に対しては服薬コンプライアンスを優先して1日1回の用法となっている。
  3. ✕コラランは血圧や収縮機能に影響せず、心拍数だけを減らすことができる。安静時心拍数が75回≦の場合に使用できる。
  4. ✕‬ベリキューボの使用は慢性心不全の標準治療を受けている患者に限られる。まずはファンタスティック4を最優先に開始する。