骨粗鬆症の薬は珍しく、同じ薬を使い続けない場合があります。
年数が経つと効果が弱くなってくるものがあるからです。
では、切り替えを考えるタイミングと、その時に推奨される薬は何でしょう?
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- ◯脊椎で行うDXAは、圧迫骨折や石灰化があるとYAM値が上がるため高齢の場合は信頼度が低い。
- ◯BPによる骨密度上昇のブーストは3-5年で効果が落ちてくるため、BPを3-5年継続してもなおリスクが高い場合は、デノスマブ(プラリア)に変更を検討する。
- ◯ 閉経後-70代前半まではSERMをまず考慮するが、静脈血栓塞栓症のリスクを上げるため、長期臥床や抗リン脂質抗体症候群では投与しない。
- ◯ BPでも骨密度の改善が見られない場合に使うデノスマブ(プラリア)は、低Caに注意してデノタスを処方する。デノタス:(Caと活性型VDの配合錠)
- ✕ 抜歯における骨吸収抑制薬(BPとデノスマブ)は休薬しないことを提案する。休薬のために抜歯が延期されることによる歯性・顎骨感染の進行が懸念される。休薬が長期に及んだ場合明らかに骨粗鬆症性関連骨折のリスクが上昇する。BPの効果として3-5年の服用が一つの目安となるため、3年以上投与されている患者においては休薬を検討する。
薬まとめ
VD(ビタミンD製剤) | アルファカルシドール(アルファロール) エルデカルシトール(エディロール) | とりあえず使える。 高Caに注意。 |
SERM(選択的エストロゲン受容体調節薬) | ラロキシフェン(エビスタ) バゼドキシフェン(ビビアント) | 閉経後-70代前半まで第一選択。 血栓症に注意。 |
BP(ビスホスホネート) | アレンドロン酸(ボナロン、フォサマック) リセドロン酸(ベネット、アクトネル) ミノドロン酸(ボノテオ、リカルボン) イバドロン酸(ボンビバ) ゾレドロン酸(リクラスト) | 骨吸収抑制作用強力。 まず使いたいが、5年で効果落ちてくるため使い方に注意。 食道炎、胃腸障害に注意。 |
副甲状腺ホルモン | テリパラチド(テリボン(週1or2))注射 テリパラチド(フォルテオ(毎日))注射 | 骨密度改善効果が超強力。 生涯で2年しか使えない。 |
抗RANKL抗体 | デノスマブ(プラリア)注射 | 腎機能低い、上記で効果が足りないならこれ。 骨密度改善効果が強力。 半年に1回の注射なので楽。 |
抗スクレロスチン抗体 | ロモロズマブ(イベニティ)注射 | 骨折のリスクが高い場合に使える。 生涯で12ヶ月しか使えない。 |
副甲状腺ホルモン関連タンパク質 | アバロパラチド(オスタバロ)注射 | 骨折のリスクが高い場合に使える。 生涯で18ヶ月までしか使えない。 |
概要
- 診断したら何でもいいから治療を開始することが大事。
SERMやVD(活性型ビタミンD製剤)でもとりあえず始める。
- 橈骨遠位端骨折などは骨粗鬆症としてのフォローが大事。
橈骨遠位端骨折でYAM <80%は骨粗鬆症の診断基準となる。
- 脊椎で行うDXA(デキサ)は、圧迫骨折や石灰化があるとYAM値が上がるため高齢の場合は信頼度が低い。
- Dual-energy X-ray Absorptiometry(二重エネルギーX線吸収測定法)
- 2種類の異なる波長のX線を照射し、骨とその他の組織の吸収の差を利用して骨密度を測定する。
- 脊椎や大腿骨近位部、前腕で骨密度を測定できる。
- 腰椎で測定すると最も早く骨粗鬆症を診断できるが、
- 上記の通り、高齢である場合にはYAM値の上昇の例に注意する。
薬の選び方
- SERMは静脈血栓塞栓症のリスクを上げるため、長期臥床や抗リン脂質抗体症候群では投与しない。
- BPは胃腸障害が多い。
- デノスマブ(プラリア)を使う時は低Caに注意してデノタスなどCa補給の薬を処方する。
- テリパラチドは最大投与年数が生涯で2年なので注意。
骨折のリスクが高い場合
- テリパラチド(テリボン) (2年)
- ロモソズマブ(イベニティ) (1年)
- アバロパラチド(オスタバロ) (1.5年)
※()内は生涯の最大投与年数
1人の生涯に対しての最大投与年数であり、休薬期間を設けても再投与はできない。
例えばテリパラチドを1年使って骨密度が改善したため休薬し、数年後にまた1年分再開して合計2年にすることは可能。
投与の順序に注意
(テリパラチドを使うなら)
必ずテリパラチド(テリボン)→デノスマブ(プラリア)の順で投与する。
- テリパラチドもプラリアも骨量の増加作用は強力だが、先にプラリアを投与してからテリパラチドを使用すると、少なくとも12ヶ月は骨密度が減少してしまう。
- 先にテリパラチドを2年間投与してからプラリアを開始する。
- 骨折の既往など、骨折リスクが高い場合は優先的にテリパラチドを使用する。
腎機能悪い場合(eGFR <30)
- デノスマブ(プラリア) (10年)
→慎重投与:低Caにならないためにデノタスを服用させる。
※()内は投与年数の目安
- SERM:ラロキシフェン(エビスタ)、バゼドキシフェン(ビビアント)
→慎重投与 - VD
→Caの濃度上昇に注意 - BP:アレンドロン酸(フォサマック、ボナロン)、リセドロン酸(ベネット、アクトネル)
→投与回避 - BP:イバンドロン酸(ボンビバ)、ミノドロン酸(ボノテオ)
→慎重投与 - テリパラチド(テリボン、フォルテオ)
→血圧低下や高Caに注意 - ロモソズマブ(イベニティ)
→低Caに注意が必要
骨量増加の部位
骨量の変化
腰椎
- テリパラチド:8%
- プラリア:7%
- BP:4%
前腕骨
- テリパラチド:1%
- プラリア:4%
- BP:2%
大腿骨頸部
- テリパラチド:2%
- プラリア:5%
- BP:2%
椎体以外の骨折ではプラリアの効果が高い。
その他
- BPを使っていて、消化器障害あればゾレドロン酸点滴静注(リクラスト)(3年)
※()内は投与年数の目安
※ゾメタ点滴静注も同じゾレドロン酸の薬だが、悪性腫瘍による高Caに使用される。
顎骨壊死
- BPやデノスマブ(プラリア)による副作用として知られる。
薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)の病態と管理顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023
- 抜歯における骨吸収抑制薬(BPとデノスマブ)は休薬しないことを提案する。
- 休薬のために抜歯が延期されることによる歯性・顎骨感染の進行が懸念される。
- 休薬が長期に及んだ場合明らかに骨粗鬆症性関連骨折のリスクが上昇する。
- 抜歯において休薬が利益を示唆するほどの結果は得られていない。←休薬するといいよ!とまでは言えない。
抜歯に際しての休薬の利益(MRONJ発症率の低下)を検討した論文はいくつかあるが、いずれも利益を得られる結果が出なかった。
- 短期間の休薬による害を示唆する結果があるわけではない。←短期間の休薬はダメだよ!とも言えない。
短期間の休業(術前2か月程度~術後)の害、(骨粗鬆症関連骨折の発症率の増加、生存率の低下)を検討した論文はない。
- 多数の要因がMRONJの発症に関わる危険因子として挙げられている。
原理
- 骨のリモデリング速度は部位によって異なり、歯槽骨(歯の周りにある骨)は脛骨の10倍、下顎骨の5倍である。
→歯槽骨は骨吸収抑制薬が取り込まれやすく、薬剤が高濃度に蓄積されやすい。 - 骨吸収抑制薬が高度に蓄積すると、正常な骨リモデリングに支障をきたす。
- この状態に抜歯などによる外傷が加わると、新骨の形成が追い付かなくなり、歯槽骨及びその上部組織の壊死が引き起こされる。
- 骨組織に直接取り込まれないデノスマブ(プラリア)は、BPと比べて半減期が短く、投与後早期に発症する。
結論
- 危険因子を有する場合、必要に応じて予防的休薬を考える。
ビスホスホネート(BP)
- 長期の投与では効果が落ちてくる。
- 効果としては5年間の服用が一つの目安となるため、3年以上投与されている患者においては休薬を検討する余地がある。
デノスマブ(プラリア)
- 投与中止後に骨密度が急激に減少し、骨代謝マーカーが急激に上昇する。
- 休薬はしない方が望ましい。
- 半年に1回投与の薬剤であり、血中濃度や抜歯後の治癒を考慮すると、投与4ヶ月後に抜歯を行うことで影響を少なくする可能性がある。
問題
e
- ◯脊椎で行うDXAは、圧迫骨折や石灰化があるとYAM値が上がるため高齢の場合は信頼度が低い。
- ◯BPによる骨密度上昇のブーストは3-5年で効果が落ちてくるため、BPを3-5年継続してもなおリスクが高い場合は、デノスマブ(プラリア)に変更を検討する。
- ◯ 閉経後-70代前半まではSERMをまず考慮するが、静脈血栓塞栓症のリスクを上げるため、長期臥床や抗リン脂質抗体症候群では投与しない。
- ◯ BPでも骨密度の改善が見られない場合に使うデノスマブ(プラリア)は、低Caに注意してデノタスを処方する。デノタス:(Caと活性型VDの配合錠)
- ✕ 抜歯における骨吸収抑制薬(BPとデノスマブ)は休薬しないことを提案する。休薬のために抜歯が延期されることによる歯性・顎骨感染の進行が懸念される。休薬が長期に及んだ場合明らかに骨粗鬆症性関連骨折のリスクが上昇する。BPの効果として3-5年の服用が一つの目安となるため、3年以上投与されている患者においては休薬を検討する。