SGLT2阻害薬は糖尿病の薬として売り出され、慢性心不全、慢性腎不全の適応をとり
一般人もやせ薬として使用し始め
糖尿病の薬として最先端を走っている薬です。
ですが、そんな華々しいSGLT2阻害薬にも使いにくいタイミングがあります。
糖尿病の合併症予防のために積極的に使いたいですが、使用前に確認することは何でしょう?
b e
- ✕糖を尿中に排泄する作用から、フレイルを助長する可能性がある。痩せ型の患者には積極的な投与は避け、肥満体型の患者で良い適応となる。
- ◯中等度の腎機能障害(eGFR 44-30)では、腎保護効果が期待できるため良い適応となる。重度の腎機能障害(eGFR<30)では、血糖効果作用が弱まるため使用は検討する。eGFR<15では透析を考慮し、新規で開始はしない。
- ✕ 投与開始後に見かけ上のeGFRが低下する。2w-2ヶ月でeGFRを評価し、投与前に比べて10~30%の低下であれば許容範囲。
- ✕ 尿糖排泄が進むと、インスリンが減少しケトン体産生が亢進する。これにより正常血糖ケトアシドーシスとなりうる。尿中ケトン体2+≦や極端な糖質制限がケトアシドーシスのリスクとなるため、積極的な投与はしない。
- ◯体液量減少効果があるため、脳梗塞の既往がある患者には使いにくい。禁忌ではないが,水分補給を徹底させる。
一覧
- イプラグリフロジン(スーグラ)←半減期長い
- エンパグリフロジン(ジャディアンス)←SGLT2選択性高い
- ダパグリフロジン(フォシーガ)←HFpEFの予後改善
- カナグリフロジン(カナグル)←SGLT1も阻害で効果強い
- ルセオグリフロジン(ルセフィ)
- トホグリフロジン(デベルザ)←夜間頻尿を回避
作用機序
・腎糸球体で濾過されたブトウ糖の近位尿細管における再吸収を抑制して、血糖の上昇を抑制する。
インスリン分泌を促進させることはない。
- 尿中へのブドウ糖排泄の増加により体重が減少する。
- 低血糖の発症頻度を増加させることなく、HbA1cを有意に低下させ、体重も減少させた。
- 血圧および脂質代謝にも一部好影響を与えた。
- インスリン治療中の患者に併用しても低血糖の発現頻度を増加させることなく、単独投与とほぼ同様の血糖降下作用や体重減少効果を認めた。
- SU薬やインスリン治療との併用で低血糖の頻度は増加させない。
注意点
- 中等度の腎機能障害(eGFR44-30)を合併する2型糖尿病患者ではダパグリフロジン(フォシーガ)は体重や血圧を低下させるものの血糖コントロールは改善させなかった。
- eGFR<30の重度腎機能障害の症例では、血糖降下作用は期待できない。
腎機能が悪くなるにつれて血糖効果作用が弱まっていく。
アルブミン尿(蛋白尿)や腎機能に関係なく腎保護効果が期待できるため積極的に使用は考慮する。
- eGFR<15では透析を考慮し、新規で開始しない。
- 浸透圧利尿により急性腎障害、体液量減少関連イベントが起きやすいので注意が必要。
75歳≦あるいは利尿薬を併用している症例で発症頻度が増加するため投与は慎重にする。
- 体液量減少により、脳梗塞を含む血栓・塞栓症の既往がある患者には使いにくい。
- 投与開始2wは尿量が増えるため、多めの水(かお茶)を摂取する。
初期は尿量が500ml増えたと報告がある。
- 体重減少効果があるため、服用中の体重モニタリングは必要。
筋肉量も測定できる体重計で、水分が減少しているのか筋肉量が落ちているのかわかるのが理想。
- 投与開始後に見かけ上のeGFRが低下する場合がある。
2w-2ヶ月でeGFRを評価する→
・投与前に比べて10~30%の低下であれば許容範囲。
・過度に下がったり下がり続けなければよい。
・投与前に比べて10~30%の低下であれば許容範囲。
・過度に下がったり下がり続けなければよい。
副作用
皮膚症状、掻痒症、皮疹、紅斑、薬疹
- 非重篤のものがほとんど(もちろん全身に生じる重篤なものもある)。
- 1日目~2wで発症する。
早期に十分な注意が必要。
- 皮疹が改善してから別のSGLT2阻害薬に変えたところ直ちに再燃した例がある。
交差反応性があるとされる。
交差反応性:まだ投与されていない物質に対しても、以前に投与された物質に対しての反応と同じことが起きる現象。
→SGLT2阻害薬により皮疹が生じた場合、他のSGLT2阻害薬に変更しても同じ症状が出る可能性があるということ。
SGLT2服用半年後にかゆみを生じた症例
→SGLT2阻害薬による利尿作用によって引き起こされた乾皮症を疑い、保湿剤で改善した。
- 糖尿病ではそもそも角質水分量や皮脂量が減っていることが多く、乾燥しやすい。
→保湿剤だけでも改善しうる。 - 頻度としては最も脱水が起こりやすい投与1日目~2wが多い。
フレイル
- 活動減少や歩行速度の低下、疲労感がある患者では悪化の恐れがある。
元々、活動低下や痩せ気味の人には投与を避ける。
→カロリー制限を緩めて蛋白質摂取を増やすことで改善を図る。
尿路感染症
- 性器感染症の頻度の増加が認められている。
尿路感染症の既往のある患者への使用は慎重に行う。
- 女性に多く、投与開始から遅くて2ヶ月後に表れる。
- 膣カンジダ症やフルニエ壊疽にも注意。
- 陰部の痒みを我慢していることがあるため注意。
- まず、女性であれば膀胱炎の既往を確認。
- トイレに行くたびに石鹸で洗い、むしろ皮膚が荒れてしまう人もいる。
毎日お風呂で洗うなど、通常通り清潔にしていればそれでよい。
正常血糖ケトアシドーシス(DKA)
・尿糖排泄が進むとインスリンが減少し、肝臓で糖新生が亢進する。
→同時に脂肪分解が進んで遊離脂肪酸が産生され、肝臓でのケトン体産生が促進する。
→この時に脱水になれば血中のケトン体が増え、正常血糖ケトアシドーシスとなる。
- 服用中は血糖値150程度でもDKAとなりうる。
- 血糖値が正常でも、悪心・嘔吐・腹痛・倦怠感がある場合は尿中or血中ケトン体を測定する。
- 糖尿病性ケトアシドーシスは高血糖を伴わないこともあり、注意が必要。
- 尿中ケトン体2+≦や極端な糖質制限がリスクとなる。
厳しい糖質制限は行わない。
使い分け
イプラグリフロジン(スーグラ)
- 半減期が15hと最も長い(他は10h前後)。
エンパグリフロジン(ジャディアンス)
- SGLT1に比べて5000倍ものSGLT2選択性を持つ。
- 糖尿病の有無に関わらず、心血管死と心不全による入院を減らした。
- HFrEFとHFpEFのどちらにも使用できる。
ダパグリフロジン(フォシーガ)
- 糖尿病の有無に関わらず、CKDの腎機能低下や心血管死を減らした。
eGFR75-25もしくはAlb尿 200-5000mg/gCrのCKDの試験データ。
- HFpEFに対する予後改善効果があった。
カナグリフロジン(カナグル)
- SGLT2の選択性が最も低い(SGLT1に対して158倍の選択性(他は1000倍前後))。
薬効分類がSGLT2阻害薬となっており、その他の薬のように選択的SGLT2阻害薬とはなっていない。
- SGLT1も阻害するため、糖の吸収を遅らせ、食後2hの糖吸収を減らすといわれている。
SGLT1は小腸で多く発現している。
- そのため、より強い血糖効果作用を期待できる。
- より一層の脱水と低血糖には注意が必要である。
- OD錠あり(柚子風味)。
ルセオグリフロジン(ルセフィ)
トホグリフロジン(デベルザ)
- 半減期が短い(5h)(他のSGLT2阻害薬は10h前後)。
→朝の服用では夜には効果が切れるため、夜間頻尿を減らすことを期待できる。
問題
b e
- ✕糖を尿中に排泄する作用から、フレイルを助長する可能性がある。痩せ型の患者には積極的な投与は避け、肥満体型の患者で良い適応となる。
- ◯中等度の腎機能障害(eGFR 44-30)では、腎保護効果が期待できるため良い適応となる。重度の腎機能障害(eGFR<30)では、血糖効果作用が弱まるため使用は検討する。eGFR<15では透析を考慮し、新規で開始はしない。
- ✕ 投与開始後に見かけ上のeGFRが低下する。2w-2ヶ月でeGFRを評価し、投与前に比べて10~30%の低下であれば許容範囲。
- ✕ 尿糖排泄が進むと、インスリンが減少しケトン体産生が亢進する。これにより正常血糖ケトアシドーシスとなりうる。尿中ケトン体2+≦や極端な糖質制限がケトアシドーシスのリスクとなるため、積極的な投与はしない。
- ◯体液量減少効果があるため、脳梗塞の既往がある患者には使いにくい。禁忌ではないが,水分補給を徹底させる。