片頭痛

【片頭痛3/3】小児・妊婦・授乳婦の頭痛!その薬は誰のため?少しでも安全に治療したい✨

片頭痛

子どもや妊婦さん、授乳婦さんに使える薬は限られてます

だけど

子どもや妊婦さん、授乳婦さんだって辛い
辛ければ食事ができない
食事ができなければ子ども自身や赤ちゃんに栄養がいかない

小児や妊婦に一般に投与が行われている薬剤でも、添付文書上の記載は「有益性が上回る場合のみ使用可能」となってしまうため本当の意味での参考にはなりません

では何を基準に選べばいいのでしょう?

限られた経験の中からエビデンスレベルを上げている薬剤はあります

このブログでは「妊娠・授乳と薬」や「頭痛の診療ガイドライン」、「欧米の頭痛ガイドライン」を参考にまとめています。

みなさんが最善の治療をできるように!

お母さんの病気は赤ちゃんに影響する!
そばにいる旦那さんも辛い!

家族のための治療を選択しよう!

問題

小児・妊婦・授乳婦の片頭痛について正しいものはどれか。

  1. 小児の急性期発作において、アセトアミノフェン(カロナール)はイブプロフェン(ブルフェン)よりも有効性が優れる。
  2. 小児の予防薬において確固としたエビデンスがあるものはない。
  3. 妊娠によって症状が悪化しやすい。
  4. トリプタン使用後は授乳を48h空ける。
  5. RID:relative infant dose(相対的乳児薬物投与量)は乳幼児に薬剤を投与する際に使用され、数値が低ければ影響が少ない。

b

  1. ‪✕‬アセトアミノフェン(カロナール)はイブプロフェン(ブルフェン)よりも有効性で劣るイブプロフェンは小児の片頭痛で推奨され、救急外来の治療では最も有効で安全と推奨される。アセトアミノフェンインフルエンザなどの合併症ある場合や坐薬や注射薬を使用したい場合に使いやすい。
  2. 小児の予防薬において確固としたエビデンスがあるものはない。頭痛の誘因を避けるなどの患者教育を中心とした非薬物療法を主体としながらも、日常生活に支障をきたす頭痛が頻回(月に4回以上)にみられる際に薬物治療を考慮する 。①眠気や抗コリンの副作用が平気アミトリプチリンエビデンスが強いトピラマート副作用が少ないプロプラノロールとミグシスプロプラノロールは喘息に禁忌のため注意、を参考にする。
  3. ‪✕‬ 妊娠初期から後期にかけて片頭痛は軽減し、妊娠後期では60%の女性患者で発作が軽減する。そのため、予防薬が必要となる患者は少ない。
  4. ‪✕‬ガイドラインなどのエビデンスがある情報を参考にすると、スマトリプタン(イミグラン)は米国小児科学会において授乳可能な薬剤とみなされている。エレトリプタン(レルパックス)母乳への移行が少なく、授乳中の使用も問題ないというエビデンスがある。添付文書でもスマトリプタンは12時間、その他のトリプタンは24時間授乳を避けると記載されている。
  5. ‪✕‬ RID:relative infant dose(相対的乳児薬物投与量)は、授乳中の薬剤投与の際に使われる指標である。経乳で摂取される総物量/当該薬物の児への投与常用量×100で表される。RID10%未満であれば児への影響は少ないと判断される。

小児

発作時

治療の基本:イブプロフェン、アセトアミノフェン→トリプタン

小児の発作治療薬
  • まず→イブプロフェン
  • 経口が無理→アセトアミノフェン(坐薬と注射ある)
  • 上記で効果がない→トリプタン

内服の目安:強い頭痛が1~2時間以上継続、嘔吐や食欲不振、頭痛後の睡眠を伴う。

・頭痛発症からできる限り早期に十分量を使用する。

イブプロフェン(ブルフェン)
  • 小児で推奨している。
思春期ではイブプロフェンに特別な推奨はない
  • 救急外来の治療では最も有効で安全と推奨されている。
アセトアミノフェン(カロナール)
  • イブプロフェンよりも有効性では劣る
  • インフルエンザ感染時にも使用できる。
  • 坐薬や注射薬を使用できる。
トリプタン
  • イブプロフェン、アセトアミノフェンで効果が得られない際に使用を考慮する。
  • 15歳未満の患児には保険適用外となるため、本人および保護者に同意を得る必要がある。
  • 12歳以下ではスマトリプタン点鼻薬とリザトリプタンが推奨される。
  • 思春期では全てのトリプタンがほぼ同等の効果として推奨される。
    →成人へ投与の際のトリプタンの効果を参考にする。

予防

予防薬の例:アミトリプチリン、トピラマート、プロプラノロール、ミグシス

小児の予防薬
  • 眠気や抗コリンの副作用が平気→アミトリプチリン
  • エビデンスが強い→トピラマート
  • 副作用が少ない→プロプラノロールとミグシス
  • プロプラノロールは喘息に禁忌のため注意

・日常生活に支障をきたす頭痛が頻回(月に4回以上)にみられる際に考慮する。

・小児・思春期の片頭痛予防薬として確固としたエビデンスがあるものはない

・発作頻度だけで決めるのではなく、患児や家族の不安を加味し生活支障度をもとに決定する。

発作回数はあくまで目安。

プラセボ効果が高いことからも、頭痛の誘因を避けるなどの患者教育を中心とした非薬物療法が主体となる。

・非薬物療法で改善しない例に対しアミトリプチリン、トピラマート(保険適用外)、プロプラノロール、ミグシスを副作用に注意しながら少量より開始する。

・2013年のメタアナリシスではトピラマートとトラゾドンが限られたエビデンスながらも有効とされ、プロプラノロール、バルプロ酸は無効とされた。

アミトリプチリン(トリプタノール)
  • 0.25mg/kg/日、最大10mg/日就寝前分1
  • 傾眠、便秘、口渇、食欲亢進などあるが、少量より開始することで問題となることは少ない
シプロヘプタジン(ペリアクチン)
  • 就寝前0.1mg/kg/日 最大4mg
  • 眠気が出るので、低用量から開始して増量していく。

妊婦

・妊娠初期から後期にかけて片頭痛は軽減する。

・妊娠後期では60%の女性患者で片頭痛発作が軽減する。

・片頭痛は、妊娠中の心血管疾患が増加するという報告が集積されつつある。

データとしては存在しないが、片頭痛を予防することで心血管疾患のリスクを抑える可能性がある。

・妊娠初期に添付文上、禁忌である薬剤を服用した場合でも、臨床的に有意な胎児への影響はない。

※NSAIDsのインドメタシン・ジクロフェナク(妊娠中期以降では胎児毒性を示す)、制吐楽のドンペリドン、予防で用いられるACE阻害薬・ARB(妊娠中期以降では胎児毒性を示す)。

発作時

治療の基本:アセトアミノフェン+メトクロプラミド→スマトリプタン

妊婦の発作治療薬
  • まず→アセトアミノフェン
  • 吐き気止めとして→メトクロプラミド(頭痛にも効果あり)
  • 症状が強い→スマトリプタン
アセトアミノフェン(カロナール)
  • 長期使用と児の神経運動発達障害との関連が報告されており、漫然とした投与は避けたほうがよい
メトクロプラミド(プリンペラン)
  • 妊娠悪阻に対し日本で広く使用されており、児への悪影響はほぼ否定されている。
スマトリプタン(イミグラン)
  • (トリプタンの中で)妊娠中の使用についてはスマトリプタンが最も報告が多く、妊娠初期の使用は催奇形性を増加させなかった
  • スマトリプタンは使用データが豊富で、比較的安全に投与可能。

予防

予防薬の例:プロプラノロール、アミトリプチリン

妊婦の予防薬
  • まず→プロプラノロール
  • 眠気や抗コリンの副作用が平気→アミトリプチリン

・片頭痛の多くは妊娠中に発作の頻度が低下するため、予防薬が必要となる患者は少ない

・経験的にβ進断薬、プロプラノロールやメトプロロールが選択肢として挙げられている。

・β進断薬(特にアテノロール)は妊娠中期以降の使用では胎児発育不全や胎盤重量の減少の可能性があるとされる。

・分娩直前まで使用していた場合は児のβ遮断症状発現の可能性があるため、24~48時間の児のモニタリングが必要である。

・各国のガイドラインではアミトリプチリンやマグネシウムが挙げられている。

アミトリプチリン(トリプタノール)
  • 必要最低量(30mg/日以下)とする。
  • 児の離脱症候群が懸念されるため、分娩2~3週間前に中止することが望ましい。

妊娠中禁忌の予防薬

バルプロ酸(デパケン)

  • 神経管閉鎖障害などの催奇形性が知られている。
  • 胎内で暖露した児は発達指数・知能指数ともに有意な低下を認めたと報告されている。

ACE阻害薬・ARB 

  • 妊娠中期以降は胎児循環障害が報告されている。

ロメリジン(ミグシス)

  • 妊娠全期で禁忌である
禁忌とはされていないが

CGRP関連薬剤

  • 妊娠中の使用によるリスクについてのエビデンスは十分ではない。

授乳婦

分娩後は1ヵ月以内に半数以上の患者で再発する。

母乳栄養が片頭痛の再発を抑える可能性が示唆されている。

・片頭痛治療薬の多くは、授乳中の使用が可能である。

発作時

使用可能な薬剤(母乳移行率が低い)

  • アセトアミノフェン
  • NSAIDsのうちイブブロフェンやジクロフェナク
  • スマトリプタン、エレトリプタン
授乳婦の発作治療薬
  • まず→アセトアミノフェン(イブプロフェン、ジクロフェナク)(強さの順)
  • 症状が強い→スマトリプタン、エレトリプタン
スマトリプタン(イミグラン)
  • 母乳移行は0.5%程度と推察される。

授乳可能な薬剤とみなされている。

米国小児科学会
エレトリプタン(レルパックス)
  • 母乳への移行が少なく、授乳中の使用も問題ないというエビデンスがある。
  • 80mgを1回投与された8人の女性で、投与後24時間の母乳に移行したエレトリプタンは投与量の0.02%であった。
トリプタンの中で

エレトリプタンのみ「level2(比較的安全)」および「使用可能」に分類されている。

「Hale’s Medications & Mothers’ Milk 2019 : A Manual of Lactational Pharmacology」「Drugs in Pregnancy and Lactation 第11版」

・添付文書上、スマトリプタンは12時間、その他のトリプタンは24時間授乳を避けると記載されている。

添付文書ばかり見ていてはできる治療もできなくなる例。

使用を避けたほうがよい薬剤

  • アスピリン
  • オピオイド(トラマドールなど)

予防

使用可能な薬剤(母乳栄養を継続できる)

・β進断薬(プロブラノロール、メトプロロール)
・マグネシウム
・アミトリプチリン

欧米の頭痛ガイドライン
授乳婦の予防薬
  • まず→プロプラノロール
  • 眠気や抗コリンの副作用が平気→アミトリプチリン

使用を避けたほうがよい薬剤

  • 抗てんかん薬のうち RID10%以上のもの(ラモトリギン、ゾニサミドなど)
  • アテノロール
  • チザニジン
  • 抗不安薬(ジアゼパム、アルプラゾラム)

RID:relative infant dose(相対的乳児薬物投与量)は、経乳で摂取される総物量/当該薬物の児への投与常用量×100で表される。
要するにRID10%未満であれば児への影響は少ない

問題

問題

小児・妊婦・授乳婦の片頭痛について正しいものはどれか。

  1. 小児の急性期発作において、アセトアミノフェン(カロナール)はイブプロフェン(ブルフェン)よりも有効性が優れる。
  2. 小児の予防薬において確固としたエビデンスがあるものはない。
  3. 妊娠によって症状が悪化しやすい。
  4. トリプタン使用後は授乳を48h空ける。
  5. RID:relative infant dose(相対的乳児薬物投与量)は乳幼児に薬剤を投与する際に使用され、数値が低ければ影響が少ない。
  1. ‪✕‬アセトアミノフェン(カロナール)はイブプロフェン(ブルフェン)よりも有効性で劣るイブプロフェンは小児の片頭痛で推奨され、救急外来の治療では最も有効で安全と推奨される。アセトアミノフェンインフルエンザなどの合併症ある場合や坐薬や注射薬を使用したい場合に使いやすい。
  2. 小児の予防薬において確固としたエビデンスがあるものはない。頭痛の誘因を避けるなどの患者教育を中心とした非薬物療法を主体としながらも、日常生活に支障をきたす頭痛が頻回(月に4回以上)にみられる際に薬物治療を考慮する 。①眠気や抗コリンの副作用が平気アミトリプチリンエビデンスが強いトピラマート副作用が少ないプロプラノロールとミグシスプロプラノロールは喘息に禁忌のため注意、を参考にする。
  3. ‪✕‬ 妊娠初期から後期にかけて片頭痛は軽減し、妊娠後期では60%の女性患者で発作が軽減する。そのため、予防薬が必要となる患者は少ない。
  4. ‪✕‬ガイドラインなどのエビデンスがある情報を参考にすると、スマトリプタン(イミグラン)は米国小児科学会において授乳可能な薬剤とみなされている。エレトリプタン(レルパックス)母乳への移行が少なく、授乳中の使用も問題ないというエビデンスがある。添付文書でもスマトリプタンは12時間、その他のトリプタンは24時間授乳を避けると記載されている。
  5. ‪✕‬ RID:relative infant dose(相対的乳児薬物投与量)は、授乳中の薬剤投与の際に使われる指標である。経乳で摂取される総物量/当該薬物の児への投与常用量×100で表される。RID10%未満であれば児への影響は少ないと判断される。