日本で1番多く処方されているARBはオルメサルタン(オルメテック)です。
オルメサルタンはARBの中で半減期も長く(12h)、Ald(アルドステロン)-ブレイクスルーを起こさないため最も選択されやすいARBになったと考えられます。
また、降圧作用が弱いものは使えない薬だと思っていませんか?降圧作用が弱い種類にもそれに適した使いどころがあるんです。
それぞれの使い分けを考えてRA(レニン-アンギオテンシン)系阻害薬をみていきましょう。
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- ✕ACE阻害薬・ARBは輸出細動脈を拡張させることで糸球体内圧を下げ腎保護として作用する。収縮期血圧が110未満になると腎血流が下がり、そこに輸出細動脈を拡張させると糸球体内圧が極端に下がることで腎機能を悪化させうる。イルベサルタン(イルベタン)は腎組織移行性が高く、降圧作用も弱いため腎保護を主訴として使用したい場合に適する。
- ◯オルメサルタンはAld-ブレイクスルーを生じないため、服用中止後の心肥大やタンパク尿を悪化させない。その他のRA系阻害薬の服用を中止するとAld-ブレイクスルーが生じるため注意が必要。
- ◯ACE阻害薬の服用によって生じる血管性浮腫(3%)は窒息になりうるため服用を中止させる。
- ◯テルミサルタンは作用時間が24hで最も長く、NASHにも効果があり、肥満体型の患者に適する。
- ◯バルサルタンは降圧効果こそ最も弱いが、それを逆手に血圧が低めの慢性心不全などの処方に適する。
RA(レニン-アンギオテンシン)系阻害薬
RA系阻害薬とは
ACE阻害薬とARBを合わせた呼び名
RAS阻害薬ともいう。
- ACE阻害薬 ~プリル:例カプトプリル(レニベース)
- ARB ~サルタン:例オルメサルタン(オルメテック)
RA系阻害薬(ACE阻害薬・ARB)の注意点と特徴
・血圧≦110では輸出細動脈の収縮阻害によりGFRが低下するためスキップさせる。
・RA系は夜~朝に活性化する。
・夜に服用することで有意に夜間の血圧を下げる(時間降圧療法)。
・服用を中止すると40%がAld-ブレイクスルーを起こす。(Ald:アルドステロン)
- RA系阻害薬(ACE阻害薬・ARB)の服用中止後に、(服用中に増加していた)Aldが心肥大やタンパク尿を悪化させる。
- 疑われたら抗Ald薬の併用を考える。
- オルメサルタンはAld-ブレイクスルーを起こさない。
RA系阻害薬は腎保護作用が有名だが逆に腎機能を悪化させてしまう条件もある!血圧が低めと感じたら注意!
重篤な腎機能障害でも同じく、さらなる腎機能の悪化に働いてしまうため気をつける!
ACE阻害薬
ACE阻害薬一覧
- カプトプリル
- エナラプリル(レニベース)
- ペリンドプリル(コバシル)
- テモカプリル(エースコール)
- イミダプリル(タナトリル)
空咳はよく聞くけど他にはどんな副作用がある?
ACE阻害薬の副作用と注意点
・ブラジキニンによる血管性浮腫(3%)→服用を中止する。
- 口唇や口腔内、首が腫れる→窒息が怖い。
- ペニシリンやアスピリンでも生じうる。
- 好発は1w以内に多い(10年で発症した例もある)。
- ACE阻害薬は3w体に留まるため、中止から6w経過してから代替薬を開始する。
治療中止になりかねない血管性浮腫という副作用がある!特に投与初期に気をつける!
ARB
ARB一覧
- カンデサルタン(ブロプレス)中 ←偏頭痛予防に
- テルミサルタン(ミカルディス)中 ←半減期が長い
- イルベサルタン(イルベタン)弱 ←腎保護作用を期待して
- オルメサルタン(オルメテック)強 ←Ald-ブレイクスルーを起こさない
- ロサルタン(ニューロタン)弱 ←夜間のみの高血圧に
- アジルサルタン(アジルバ)強 ←強い降圧効果を期待して
- バルサルタン(ディオバン)弱 ←心不全に
降圧作用は
オルメサルタン、アジルサルタンが強く
カンデサルタン、テルミサルタンが中くらい
イルベサルタン、ロサルタン、バルサルタンは弱い
- 降圧効果は弱いなら弱いなりの良さがある。
ARBの種類と特徴:薬剤ごと
カンデサルタン(ブロプレス)中
- 半減期が短く(2h)、半日しか持たない。※用法は全てのARBで1日1回である。
- 偏頭痛の予防に効果がある(Group2(ある程度有効)に分類)。
時間帯による高血圧や片頭痛持ちに使いやすい!
テルミサルタン(ミカルディス)中
- 半減期が24hで最も長い。
- PPARγ活性があり、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)への効果が期待できる。
・高血圧を有するNASHに推奨度2、エビデンスレベルC。
肥満体型に使いやすい!
イルベサルタン(イルベタン)弱
- 弱いPPARγ活性がある。
- 腎組織移行性が高い→腎保護作用を期待できる。
・ロサルタンも1.4倍で高い。
・その他のARBは血中濃度より低い。
腎保護作用をメインで考える時に使いやすい!
オルメサルタン(オルメテック)強
- ACE2刺激作用によってAldが増加しないためAld-ブレイクスルーを起こさない。
・ACE2はアンジオテンシンⅡをAT2受容体を刺激しにくい物質に変える。
- 半減期は12h程度で、ARBの中では十分長い。
服薬中止した場合による影響が無い(Ald-ブレイクスルーを起こさない)ことと半減期も長いことから、他に条件がない時にまずはで使いやすい!
ロサルタン(ニューロタン)弱
- 降圧作用はそれほど強くない。
- 半減期が短く3h程度である。
- 尿酸値を下げる→他のARBに変更した場合の尿酸値に注意する。
- 尿酸値の低下はURAT1阻害によって生じる(ベンズブロマロンと同じ)。
時間帯による高血圧の症例(朝だけ少し血圧が高い→眠前に服用させる)や痛風歴がある、高尿酸血症合併例に使いやすい!
アジルサルタン(アジルバ)強
- 降圧作用は最も強いとされる。
- 半減期が長く(12h)、効果が持続していなかった症例に適する。
特に降圧作用を求める場合に使いやすい!
バルサルタン(ディオバン)弱
- 降圧作用は最も弱い。
血圧をそれほど下げたくない場合の慢性心不全などに使いやすい!
問題
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- ✕ACE阻害薬・ARBは輸出細動脈を拡張させることで糸球体内圧を下げ腎保護として作用する。収縮期血圧が110未満になると腎血流が下がり、そこに輸出細動脈を拡張させると糸球体内圧が極端に下がることで腎機能を悪化させうる。イルベサルタン(イルベタン)は腎組織移行性が高く、降圧作用も弱いため腎保護を主訴として使用したい場合に適する。
- ◯オルメサルタンはAld-ブレイクスルーを生じないため、服用中止後の心肥大やタンパク尿を悪化させない。その他のRA系阻害薬の服用を中止するとAld-ブレイクスルーが生じるため注意が必要。
- ◯ACE阻害薬の服用によって生じる血管性浮腫(3%)は窒息になりうるため服用を中止させる。
- ◯テルミサルタンは作用時間が24hで最も長く、NASHにも効果があり、肥満体型の患者に適する。
- ◯バルサルタンは降圧効果こそ最も弱いが、それを逆手に血圧が低めの慢性心不全などの処方に適する。