片頭痛疾患

【片頭痛1/3】発作時の治療薬!トリプタンだけに非ず!

片頭痛

片頭痛人口の10%、日本では1000万人の患者数がいるとされています。

身の回りにもいませんか?

市販薬を飲んだが治らず辛い思いをしている方が。

患者さんからもこの前頭が痛くてと、相談されることも多いはず

今や片頭痛にもいろいろな種類の薬があります!

その人に合った薬があるはず!

どんな治療法、どんな薬があるのかみていきましょう。

問題

58歳男性。主訴は頭痛。頭部画像所見にて器質的疾患はなく、片頭痛と診断された。クロピドグレル(抗血小板薬)とタケキャブ(PPI)の服用を確認できた。仕事には車を運転して行く。心筋梗塞の既往、胃潰瘍、腎機能の低下があると言っている。
治療薬として選択し得るものはどれか2つ選べ。

  1. アセトアミノフェン(カロナール)
  2. ジクロフェナク(ボルタレン)
  3. エルゴタミン・無水カフェイン(クリアナール配合錠)
  4. エレトリプタン(マクサルト)
  5. ラスミジタン(レイボー)

ジクロフェナクはNSAIDs
少し嫌な問題かもしれません。何に注意すべきか、させるべきかが大切です。

a.e


  1. アセトアミノフェン(カロナール)は重篤な腎機能障害には投与間隔を空けるなど考慮が必要な場合があるが、少なくとも腎障害に対して禁忌ではない
  2. ‪✕‬
    ジクロフェナク(ボルタレン)はNSAIDsの中では効果が強いと感じる方が多い。副作用も同じく強いので注意。重篤な腎機能障害に禁忌。患者が腎機能低下があると言っているだけなので重篤なのか軽度なのかは不明。軽度であれば使えないことはないが積極的に使いたくはない。決め手は胃潰瘍で治療中であることで、これは禁忌である。
  3. ‪✕‬
    エルゴタミン・無水カフェイン(クリアナール配合錠)はトリプタンと似て血管収縮作用により片頭痛に作用する。心筋梗塞などの血管障害に禁忌
  4. ‪✕‬
    エレトリプタン(マクサルト)は即効性があるトリプタンである。心筋梗塞などの血管障害(脳卒中や末梢血管)に禁忌である。服用後の車の運転もさせられない

  5. ラスミジタン(レイボー)は副作用として眠気があり、8hは車の運転はできないが、服用後に家にいる場合や仕事には交通機関を使ってもらえば問題ない。服用後は8hは運転してはいけないことは強調して説明したい。また、血管障害に禁忌はない(心筋梗塞の既往がある患者にも使用できる)。ほとんどが肝代謝であり、腎機能障害にも使用できる

片頭痛の治療について

片頭痛急性期の治療は下記の薬物療法が中心となる。

  • アセトアミノフェン(カロナール)
  • NSAIDs
  • エルゴタミン・無水カフェイン(クリアナール配合錠)
  • トリプタン※
  • ラスミジタン(レイボー)※
  • 制吐薬

~中等度の頭痛にはアセトアミノフェンかNSAIDs

中等~重度の頭痛、軽~中等度の頭痛でもNSAIDsの効果がなかった場合にはトリプタンもしくはレイボー

・それでも効果が不十分な場合はNSAIDsとトリプタンもしくはレイボーの併用

・いずれの場合でも制吐薬の併用は有用である。

片頭痛の急性期の治療(実践編)

メトクロプラミドiv(静注intravenous injection)(悪心・嘔吐対策として使用するがなぜか頭痛にも効く)。

 1-2分かけてゆっくりと、早いとジスキネジア(錐体外路症状)出る。
→呂律が回らなくなり、「先生話しひふいえふ(話しにくいです)」
・メトクロプラミド、ドンペリドンは内服でも効果があるが嘔吐してる場合はivが望ましい

 治らなければ

・クロルプロマジンもしくはハロペリドールiv(適応外)。

・眠くなる→起きたら治ってる→立ち上がりの際の起立性低血圧に注意する。
・クロルプロマジンはドパミンとヒスタミンの遮断による制吐作用がある。

・単回のデキサメタゾンivも治療抵抗性の片頭痛発作の治療の選択肢の1つ。

※トラムセットは片頭痛急性発作に有効とされたが安易な処方は控える。

オピオイドの使用は中枢感作や薬剤乱用頭痛を引き起こすという危険があり、さらにオピオイドはトリプタンの反応低下をもたらす。

眼の奥の痛みには鼻粘膜ブロック:綿棒にキシロカインを付けて鼻の奥に挿す。

トリプタン

トリプタンの多様な剤形について

・発作で生活に支障をきたしている、頻回の嘔吐で内服が困難な場合に経口薬以外を使用する。

・注射薬、点鼻薬がある。

日本ではスマトリプタン(イミグラン)の注射薬、点鼻薬がある。

・効果発現スピードは
注射薬→点鼻薬→経口の順に早い。

スマトリプタン(イミグラン)の注射は12分で効果発現する。

トリプタン:使い分けと特徴

  1. スマトリプタン(イミグラン)←妊婦に
  2. リザトリプタン(マクサルト)←即効性の
  3. ナラトリプタン(アマージ)←長く効く
  4. エレトリプタン(レルパックス)←授乳婦に
  5. ゾルミトリプタン(ゾーミッグ)←よく効く

トリプタンは特別な記載がない限り発作時に1錠飲んで、2時間後に1錠追加でき、1日2錠までの服用である。

スマトリプタン(イミグラン)
  • 1日4錠まで(2時間空けて)投与できる。
  • 1回1錠で効果がなかった場合、次回から1回2錠で開始できる
  • 注射薬や点鼻薬の剤形がある。
  • 注射は12分で効果発現があり即効性に優れる。
注射は先発品のイミグランキット皮下注のみ存在する。
  • 自己注射の為いつでも使える。
  • 妊娠中での使用データが豊富で、比較的安全に投与可能。
  • 12歳以下ではスマトリプタン点鼻薬(もしくはリザトリプタン(マクサルト))が推奨される。

点鼻や注射を使用したいときや、妊婦や小児に使用可能。

リザトリプタン(マクサルト)
  • 即効性が高いが、効果が切れるのも早い
  • プロプラノロール(片頭痛の予防薬)と併用禁忌(どちらもMAOで分解されるため)。
  • RPD(OD)錠が存在する。
嘔気が強い場合にも投与しやすい
  • Tmaxは普通錠1.0h、RPD錠1.3hrで普通錠の方が効きが早い(先発とGEのRPD錠は生物学的同等とされる)。
  • 小児領域でのデータが多くあり、小児に使いやすい

早く効いて欲しい時に有用。

ナラトリプタン(アマージ)
  • 効き始めは遅い(Tmax2.5h)が、再発率は低い(長く効いてくれる)
  • 投与間隔を4時間空ける
  • 副作用は少ない

長く効いて欲しい時に有用。

エレトリプタン(レルパックス)
  • 中枢性の副作用(眠気など)や首や胸の締め付け感が少ない
  • 授乳中に使いやすい
  • 母乳への移行が少なく、授乳中の使用も問題ないというエビデンスがある。
  • GEではOD錠が存在する。

授乳中に使用可能。

ゾルミトリプタン(ゾーミッグ)
  • 1日4錠まで(2時間空けて)投与することができる。
  • 1回1錠で効果がなかった場合、次回から1回2錠で開始できる
  • 効果が強めだが、眠気の副作用も強い
  • RM(OD)錠がある。

強い効果を期待したいときに有用。

トリプタン:使い分けと特徴(表)

特別な記載がない限り発作時に1錠飲んで、2時間後に1錠追加でき、1日2錠までの服用である。

スマトリプタンイミグラン1日4錠まで(2時間空けて)投与できる。
・1回1錠で効果がなかった場合、次回から1回2錠で開始できる
注射薬や点鼻薬の剤形がある。
妊娠中に比較的安全に投与可能。
12歳以下で推奨される。
リザトリプタンマクサルト即効性が高いが、効果が切れるのも早い
プロプラノロール(片頭痛の予防薬)と併用禁忌(どちらもMAOで分解されるため)。
RPD(OD)錠が存在する。
小児に使いやすい。
ナラトリプタンアマージ効き始めは遅いが、再発率は低い(長く効いてくれる)。
・投与間隔を4時間空ける
副作用は少ない
エレトリプタンレルパックス・中枢性の副作用(眠気など)や首や胸の締め付け感が少ない
授乳中に使いやすい。
GEではOD錠が存在する。
ゾルミトリプタンゾーミッグ1日4錠まで(2時間空けて)投与できる。
・1回1錠で効果がなかった場合、次回から1回2錠で開始できる
効果が強めだが、眠気の副作用も強い
RM(OD)錠がある。

トリプタンの禁忌

  • 心筋梗塞や脳卒中、末梢血管障害の既往
  • コントロールが良くない高血圧
  • MAO阻害薬服用中

・トリプタンに血管収縮作用があるため、これらの場合で禁忌となる。

レイボーなら使うことができる

副作用で眠気が出ることがあるため

・服用後、車の運転はしてはいけない!

→レイボーでもダメ!

トリプタン以外の薬

レイボー(50.100)(ラスミジタン)2022発売
  • 作用機序:5-HT1F受容体遮断
  • 中枢作用:疼痛の抑制
  • 末梢作用: CGRP(三叉神経からの神経原性炎症や疼痛に関わる)の放出を抑制
5-HT1Bの作用がほとんどないため血管収縮作用もないが、脂溶性が高く、血液脳関門を通過するため中枢系の副作用が生じる。
  • 副作用:めまい(40%)・傾眠(20%)・倦怠感(10%)・嘔気(8%)
副作用は1時間で発現し、75%は8時間以内に消失する。
実際にはほとんどの方で眠気やめまいが生じて、特に日中の服用は困難になる場合が多い。
  • 眠気、めまいの副作用多過ぎてほとんどの人が使えない。
    寝る前に使う
  • 特に女性では50mgから開始して、慣れてから増やす。
  • 何回か使ってるうちに副作用は減ってくる場合が多い。
  • 運転能力は8時間後では有意な低下を認めなかった。
    8時間は運転してはいけない
  • プロプラノロール(片頭痛の予防薬)との併用で心拍数低下がみられるため併用に注意する。
  • 1回100mg 50or200mgでも可
  • 頭痛が一旦消失後に再投与も可能だが、総投与量が200mg/日を超えないようにする。

トリプタンとの違い

  • トリプタンと異なり血管収縮作用はないため虚血性心疾患や脳血管障害にも使える
  • トリプタンよりも有効性が低く、めまいや傾眠などの有害事象が多い。
  • トリプタンでみられる胸部不快感、胸痛、咽喉校扼感は少ない

・重大なSEとしてセロトニン症候群がある。

腱反射亢進、筋強剛、発熱、頻脈、発汗、下痢、皮膚紅潮等の自律神経症状、不安、軽躁等の精神症状を起こす。

・認められたら薬を中止し、体の冷却、水分補給と適切な処置を行う。

・セロトニン作動性抗うつ薬やMAO阻害薬との併用で発症リスクが高まる。

・眠気やめまいが多過ぎて使いにくい反面、心筋梗塞や脳卒中の既往などの禁忌がない

・胸部不快感などの副作用含め、トリプタンを使えない場合に使用しやすい

問題

問題

58歳男性。主訴は頭痛。頭部画像所見にて器質的疾患はなく、片頭痛と診断された。クロピドグレル(抗血小板薬)とタケキャブ(PPI)の服用を確認できた。仕事には車を運転して行く。心筋梗塞の既往、胃潰瘍、腎機能の低下があると言っている。
治療薬として選択し得るものはどれか2つ選べ。

  1. アセトアミノフェン(カロナール)
  2. ジクロフェナク(ボルタレン)
  3. エルゴタミン・無水カフェイン(クリアナール配合錠)
  4. エレトリプタン(マクサルト)
  5. ラスミジタン(レイボー)

ジクロフェナクはNSAIDs
少し嫌な問題かもしれません。何に注意すべきか、させるべきかが大切です。

a.e


  1. アセトアミノフェン(カロナール)は重篤な腎機能障害には投与間隔を空けるなど考慮が必要な場合があるが、少なくとも腎障害に対して禁忌ではない
  2. ‪✕‬
    ジクロフェナク(ボルタレン)はNSAIDsの中では効果が強いと感じる方が多い。副作用も同じく強いので注意。重篤な腎機能障害に禁忌。患者が腎機能低下があると言っているだけなので重篤なのか軽度なのかは不明。軽度であれば使えないことはないが積極的に使いたくはない。決め手は胃潰瘍で治療中であることで、これは禁忌である。
  3. ‪✕‬
    エルゴタミン・無水カフェイン(クリアナール配合錠)はトリプタンと似て血管収縮作用により片頭痛に作用する。心筋梗塞などの血管障害に禁忌
  4. ‪✕‬
    エレトリプタン(マクサルト)は即効性があるトリプタンである。心筋梗塞などの血管障害(脳卒中や末梢血管)に禁忌である。服用後の車の運転もさせられない

  5. ラスミジタン(レイボー)は副作用として眠気があり、8hは車の運転はできないが、服用後に家にいる場合や仕事には交通機関を使ってもらえば問題ない。服用後は8hは運転してはいけないことは強調して説明したい。また、血管障害に禁忌はない(心筋梗塞の既往がある患者にも使用できる)。ほとんどが肝代謝であり、腎機能障害にも使用できる