HFrEF(ヘフレフ):左室駆出率が40%以下と低下した状態の心不全。収縮不全といえる。
HFmrRF(ヘフエムレフ):HFrEFとHFpEFの中間に位置する状態。
HFpEF(ヘフペフ):左室駆出率が50%以上にも関わらず生じている心不全。拡張不全といえる。
ちなみに左室駆出率の正常値は55-60%です。
心臓の動きが低下しているHFrEFが心不全になることは理解しやすいですが、心臓は収縮しているのに十分な拡張なく生じているHFpEFは一見理解が難しいですね。
病態としても理解しやすいHFrEFでは治療法の確立が進んでいます。
逆にHFpEFは確立された治療法はなく、状態に合わせた治療となります。
慢性心不全の治療に関して、正しいものを2つ選べ。
- HFrEFの治療の基本は薬剤の少量単剤投与である。
- HFrEF患者にはできるだけ早期にSGLT2阻害薬を導入する。
- HFrEFと診断された者がHEmrEFに移行することはない。
- HFpEFに対してSGLT2阻害薬は心不全増悪による入院を減少させた。
- MR拮抗薬投与後にカリウムの上昇がみられた場合は、即座に中止し、今後の投与を禁止する。
b d
✕HFrEFの治療は4剤の基本薬(ACE阻害薬/ARBまたはARNI(アーニー)、MR拮抗薬、β遮断薬、SGLT2阻害薬)をできるだけ導入し治療する。可能であれば用量も上げて高用量を目指す。
◯a同様に基本薬を早期に導入する。
✕ HFrEFに対する治療が走行すれば左室駆出率が改善し、HEmrEFの病態となりうる。HEmrEFとなってからもHErEFとしての治療を継続する。
◯SGLT2阻害薬はHFpEFにも有効性を示し、心不全増悪による入院は減少させる。しかし、心血管死には有意差がないとされる。
✕基本の治療薬はできるだけ継続したいため、高Kによって一時的に服用中止となった場合でも再開を目指す。高Kの治療薬であるロケルマを併用して服用続行も検討する。
HFrEF(左室駆出率≦40%)
・左室の動きが悪い状態(左室駆出率≦40%)の心不全
治療の基本
4剤の基本薬
・副作用や禁忌がなければできるだけ服用させる。
- ACE阻害薬/ARBまたはARNI(アーニー)
- MR拮抗薬
- β遮断薬
- SGLT2阻害薬
- サクビトリル・バルサルタン(エンレスト):サクビトリル(BNPの分解を阻害する)とバルサルタン(ARB)が合わさった薬。
- ACE阻害薬/ARBを先に投与してからエンレストに切り替える。
- ACE阻害薬/ARBより高圧作用が強いため、血圧の低下に注意する。
基本薬にプラスする薬
- 基本薬の他には硝酸薬、利尿薬、ジギタリス製剤、コララン、ベリキューボがある。
- コラランを早期に投与することで血圧を下げ過ぎずにβ遮断薬を増量する効果が期待できる。
- 基本薬を使用しても予後不良な状態に期待されるのがsGC刺激薬のベリキューボ。
- ACE阻害薬/ARBまたはARNI、利尿薬、NSAIDsの3剤併用は2剤併用に比べてAKIとなるリスクが高くなること。
- 3剤とも糸球体への血液流入量を減らすため。
- 心不全の患者にNSAIDsを追加するときは、腎不全にならないよう注意が必要。
HFmrEF(左室駆出率41-49%)
治療の基本
- 元々左室駆出率41-49%の場合やHFrEF(左室駆出率≦40%)から改善した患者も含まれる。
- 病態としてはHFrEFに近く、基本薬の有効性が示唆されている。
- しかし、大規模臨床試験のエビデンスは少ない。
HFpEF(左室駆出率50%≦)
治療の基本
HFrEFと異なり、予後を改善する治療法が確立されていないのが現状。状態に対する治療を行う。
- うっ血に対して利尿薬
- 心房細動に対して心拍調整薬
- 高血圧に対して高圧薬(ANRI(エンレスト)を含む)
- β遮断薬でHRを落とすと予後改善につながるとされているが、効果は個人差が大きい。
- SGLT2阻害薬はHFpEFにも有効性を示し、心不全増悪による入院は減少させる。しかし、心血管死には有意差がないとされる。
腎機能が悪い心不全の処方例
高Kのリスクの高いMR拮抗薬を除いた基本薬3剤(エンレスト、β遮断薬、SGLT2阻害薬)で治療していた症例
→心不全悪化の兆候がみられた。
→スピロノラクトン(エプレノンも適応あり)を追加する。
→K値5.2に上昇した。
→本来であればMR拮抗薬は休薬するところだが、ロケルマ追加で継続してみる。
→1週間後にK値は4.4まで低下した。
結果:ファンタスティック4(基本薬3剤とMR拮抗薬)の全ての服用を続けることができた。